私が子どもの頃 母がよく使っていた黒いスエードのカバン
それは細くて長い持ち手にマチもポケットも無いような
とても簡素なつくりのカバンだった
特にこれといったデザイン性があるわけではないのに
なぜかそれは私の記憶にずっと残っていて
いつからかそんなカバンが欲しいと思うように
ある時共通の友人を介してANDADURAの山本さんと出会い
私の記憶の中から山本さんによって切り出され 出来上がったのが
”FLAT”と名付けられたとってもシンプルなつくりのカバンです
【 FLAT 】
和歌山で、お洋服を作っているjijiさんと今年も一緒にカバンを作りました。jijiの引網さんに、はじめてお会いした時、一緒にカバンを作りましょうと話をして、帰りの車の中、頭の中で出来たのが、このカバンです。引網さんから、お母さんが使っていたカバンのイメージを伝えてもらった時、その風景に憧れのようなものを感じました。少し前に読んでいた本の中で、素朴という言葉に、シンプルというルビがふっているのを目にして、ひとりで静かな衝撃を受けていました。15分くらいじっとして、その言葉が体に入っていくようすを観察していると、シンプルという言葉の周りについていた、力みのようなものがはがれていくのを感じました。その少し後に読んだ本で、質朴ということばに出会い、自分が学生の時から憧れていたシンプルという言葉は複雑さと背反しない、やわらかい言葉で表されるようなものだったんだ。と今さらながら気がつきました。去年jijiさんがFLATに書いた文章を読んでいると、「私の記憶の中から山本さんによって切り出され」ということばがありますが、FLATを作っているとき、僕が切り出したものは、憧れのようなものだったのか。そして、それは僕の憧れでもあったのだ。jijiさんの文章を読んでいると、そのことを最初から分かっていたのか、と感じ、震える。ANDADURA 山本祐介ー
[ FLAT ] ANDADURA × jiji shoulder bag
material
size
color
cowhide leather